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【職業インタビュー】臨床工学技士の仕事について、実際に聞いてみました!

医療の現場では、医師や看護師だけでなく、最先端の医療機器を操り命を支える専門職がいます。それが「臨床工学技士」です。医療と工学、二つの専門知識を融合し、人工呼吸器や透析装置、心臓手術で用いられる人工心肺装置などを安全に運用する役割を担います。患者の命を守る最前線で、医療チームの一員として欠かせない存在でありながら、まだその仕事の全貌を知らない人も多いでしょう。この記事では、臨床工学技士の仕事内容からキャリアパス、将来の展望までを、記者の質問に答える形で詳しく解説します。

1. 臨床工学技士とはどのような職業ですか?

臨床工学技士は、医療現場で生命維持管理装置などの「医療機器」を専門的に扱う国家資格職です。医師や看護師と連携し、人工呼吸器、透析装置、心臓手術で使われる人工心肺装置などの操作・保守・点検を行います。つまり、「医療」と「工学」の橋渡しをする技術者であり、医療チームに不可欠な存在です。

2. 主な仕事内容を教えてください。

臨床工学技士の仕事は大きく3つに分類されます。

  1. 生命維持管理業務として、人工呼吸器や人工心肺装置など、患者の生命維持に関わる装置の操作・監視を行います。
  2. 医療機器管理業務として、院内の医療機器を安全に使えるよう、日常点検や修理、使用履歴の管理などを行います。
  3. 血液浄化業務(透析)として、慢性腎不全患者の透析治療を支える装置の操作・管理を担当します。

3. どんな場所で働くことが多いですか?

多くは病院やクリニックに勤務します。特に、手術室・集中治療室(ICU)・透析室など、高度な医療機器を使用する現場が中心です。その他、医療機器メーカーや医療機器のメンテナンス会社、大学や研究機関に勤めるケースもあります。

4. 臨床工学技士になるためにはどんな資格が必要ですか?

国家資格「臨床工学技士免許」が必要です。受験資格を得るには、臨床工学技士養成課程を設けた専門学校・短期大学・大学を卒業する必要があります。卒業後、国家試験に合格すれば資格が取得できます。

5. 学校ではどのようなことを学ぶのですか?

専門学校や大学では、医学(解剖学・生理学など)と工学(電気・電子・機械・情報工学など)の両面を学びます。さらに、医療機器の構造や原理、患者対応など、臨床実習を通して実践的な知識と技能を身につけます。

6. 仕事のやりがいは何ですか?

臨床工学技士は、医師や看護師と同じ現場で患者の命を支えます。例えば、心臓手術中に人工心肺装置を安全に動かすことや、透析患者の体調を維持することなど、「人の命を直接支える」実感が大きなやりがいです。また、機器のトラブルを迅速に解決するなど、技術力が医療の安全を守る場面も多くあります。

7. 求められるスキルや性格はありますか?

機械や電気に関する基礎知識はもちろんですが、それ以上に重要なのは冷静な判断力チームワークです。医師や看護師と連携して行動するため、コミュニケーション能力も欠かせません。また、緊急時でも落ち着いて機器を扱える精神的な安定も求められます。

8. 夜勤や残業はありますか?

勤務先によりますが、夜勤やオンコール(呼び出し)対応がある施設も多いです。特に集中治療室や手術室など24時間体制の現場では、夜間の呼び出しに対応することもあります。ただし、透析室勤務の場合は比較的昼間の勤務が中心です。

9. 年収について教えてください。

臨床工学技士の平均年収はおおよそ400万〜550万円程度です。
新卒では年収300万円台からスタートし、経験を積むにつれて上がっていきます。公立病院や大学病院では給与体系が安定しており、民間病院やメーカー勤務の場合は成果に応じた変動があります。管理職や専門技術職になると、年収600万円以上を得ることも可能です。

10. どのようなキャリアパスがありますか?

臨床工学技士としてのキャリアパスは多様です。
最初は透析や集中治療などの特定分野で経験を積み、その後、主任技士や機器管理責任者としてチームをまとめる立場に進む人もいます。また、医療機器メーカーの技術職や臨床開発職へ転職するケースもあり、専門性を活かして教育・研究の道に進む人もいます。

11. 他職種との違いは何ですか?

看護師や放射線技師などが「医療の直接ケア」を担うのに対し、臨床工学技士は医療機器を通じて医療を支える点が特徴です。機器の専門知識に特化しているため、医療チームの中でも「技術のスペシャリスト」としての役割が明確です。

12. 就職先の需要はありますか?

少子高齢化と医療の高度化により、臨床工学技士の需要は年々増加しています。特に、人工呼吸器や透析などの分野では全国的に技士の不足が課題となっており、安定した就職が見込める職業です。

13. 専門分野に特化することはできますか?

はい。臨床工学技士は専門性を磨くことで、呼吸治療専門技士透析技術認定士、心血管インターベンション技師(ITE)などの認定資格を取得できます。これにより特定領域での評価や給与アップにつながることもあります。

14. 今後の臨床工学技士の展望は?

医療のデジタル化やAI技術の導入に伴い、臨床工学技士の役割はさらに広がると予想されます。医療機器のネットワーク管理、遠隔モニタリング、手術支援ロボットの操作など、新たな技術領域での活躍も増えていくでしょう。

15. 最後に、進路に悩んでいる学生へアドバイスをお願いします。

臨床工学技士は「人の命を守る技術者」です。機械が好きな人、医療に関心がある人、どちらの興味も活かせるやりがいのある職業です。勉強は大変ですが、現場に出たときに「この機器を通して患者さんの命を支えた」と実感できる瞬間が必ず訪れます。ぜひ自分の得意分野を伸ばしながら、誇りを持って挑戦してほしい職業です。