「家具は家の主役ではない」と言われがちですが、世界のオークションハウスでは“家具こそが芸術品”として億単位の値をつけることもしばしば。今回はカテゴリー別に“桁違い”の名品たちをご紹介します。
キャビネット「バドミントン・キャビネット」(Badminton Cabinet)

引用:https://www.liechtensteincollections.at/en/collections-online/badminton-cabinet
18世紀フィレンツェのグランド・デュカル工房が6年をかけて製作した黒檀の巨匠作。天頂に時計、全面にピエトラ・デュラ(石象嵌)を施し、2004年のクリスティーズで 約3,667万ドルという家具史上最高額を更新しました。その後はウィーンのリヒテンシュタイン美術館で王者の風格を放っています。
アームチェア「ドラゴンズ・チェア」(Dragons Armchair)

アイルランド出身のデザイナー、アイリーン・グレイが1917〜19年に制作。“龍”を象った漆塗りのアームが躍動感を放つ唯一無二の椅子は、2009年パリで開催されたイヴ・サン=ローラン&ピエール・ベルジェ・コレクションで2,800万ドルに到達。20世紀装飾芸術の頂点として語り継がれています。
デスク「ウートン・デスク」(Wooton Desk)

“キング・オブ・デスク”の異名通り、扉を開けば小引き出しと鳩穴が蜂の巣状に現れる19世紀アメリカ製の機能美。希少な保存状態の一台がオークションで1,210万ドルを叩き出し、アンティークデスク界の頂点に君臨しています。
ベッド「バルダッキーノ・シュプリーム」(Baldacchino Supreme)

引用:https://stuarthughes.com/shop/luxury-furniture/baldacchino-supreme-the-world-most-exclusive-bed/
英国デザイナー、スチュアート・ヒューズとイタリアの名門工房が手を組んだ、わずか2台限定の天蓋ベッド。チェスナット&アッシュ材のフレームに24金を107 kgもあしらい、ヘッドボードにはダイヤモンドをカスタム可能。2011年の発表時に630万ドルという価格を確立しました。
ソファ「クライブ・オブ・インディア・ソファ」(Clive of India Sofa)

18世紀イギリス東インド会社の英雄ロバート・クライブが所有したとされるアンゴ=インディアン様式の逸品。チーク材に象牙象嵌とシルク張りを施した豪奢なソファは、歴史的背景も相まってオークションで780万ドルに達しました。
ダイニングテーブル「タフト・テーブル」(Tufft Table)

引用:https://www.luxuo.com/culture/design/table.html
1700年に米国の家具師トーマス・タフトがリチャード・エドワーズ家のために製作。ロココ調の透かし彫りやボール&クロウ脚など細部まで手彫りで装飾され、フィラデルフィアの競売で460万ドルを記録。食卓でありながら美術館級という異彩を放ちます。
まとめ
こうして眺めると、家具は「使う道具」を超えて「時代と職人技、そして物語」を宿す究極の芸術であることがわかります。家に置くのは難しくとも、その背景にある歴史や技巧を味わえば、日常のテーブルや椅子さえ少し誇らしく見えてくるかもしれません。